2018年11月15日木曜日

高橋弘希の「送り火」について

読んだ読んだ、いいものを読んだ。高橋弘希の「送り火」。東北の地方町を舞台にして、中学校でのいじめを赤裸々に描いた芥川受賞作である。十年前、川上三映子が『ヘブン』を出版し、話題を呼んだ記憶がある。確かに「悪の根源を問う」作品と発表当時謳われたが、私としては寧ろ高橋弘希の「送り火」に迫真力があると思う。『ヘブン』では、〈被害者━加害者〉と〈罪━罰〉という分かりやすい構図が描かれる。被害者が救済される、加害者が処罰される、事件が解決される、といった、ある意味では、後味のいい作品である(記憶違いかもしれない)。「送り火」は『ヘブン』と異なり、被害者と加害者の関係を被害者の観点からではなく、暴力を傍観している第三者の観点から描く。加害者の責任ではなく、自己保身のため暴力を黙認し、そしてそれによって暴力の更なるエスカレートを可能にしている第三者の責任がこの作品で問われる。

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