2018年12月10日月曜日

徳冨蘆花の『不如帰』について

生誕150周年(ゴーリキーのこと)といえば、1868年12月8日に生まれた徳冨蘆花の名を挙げないわけにはいかない。近年、半ば埋もれてしまったが、1890年代後半から20世紀初頭にかけて盛んに活躍し、小説ばかりではなく、すぐれた人物伝や紀行文も数多く後世に残した文豪である。同時代にしては珍しく様々な社会や政治問題に積極的に関与したその作家的態度も評価すべきであろう。しかし、何よりも、日本近代文学史上初のインターナショナル・ベストセラーの著者であることを忘れてはいけない。日本国内でも絶大の人気を博した長編小説『不如帰』は1904年の英訳をはじめ、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ポーランド語、ロシア語、チェコ語、クロアチア語、中国語など、20世紀前半に十数か国語に翻訳されている。今読んでみると、やや不自然なところもあるかもしれないが、決して悪い小説ではない。ぜひこれを機に、かつて全世界で読まれた(といっても過言ではなかろう)日本文学の名作を読んでみてください。


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